今日と明日2月8日(日)の二日間、ペンドクターの川口明弘先生が神戸 西神中央のナガサワ文具店でペンクリニックをしておられます。
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ここ数ヶ月万年筆関連の記事ばかり読み漁っているわけだが、そのなかの記事に「手のひらに乗せただけの筆圧ゼロの状態でインクが出ない万年筆は調子が悪い」と書かれていた。
それを見て同じようにやると、私のグランセNC、筆圧ゼロではほとんどインクが出ない…。
そういえば数字の8や丸を書くときに掠れる。私の書き方が悪いだけかと思っていたが。
持っていって何もなければそのまま持って帰ればいいし、一度ペンドクターに相談したいなぁと思っていた所にペンクリニックのイベント情報が。
西神中央は電車だけで片道一時間半かかるため少し行くのをためらったけど、毎日使う万年筆を気にしながら使うストレスを考えたら行くしかない。
しかも川口先生だし、正直お会いしたい。
でもって今日は先日買って取り寄せしていたプロギアスリムを取りに行く日なので、待っている人が少なければ初期チェックもお願いできれば…と図々しく向かうのであった。
結論から言うと、2本とも調整が必要でした。
しかも今日買ったばかりのプロギアスリムの方が重症でペン先まで抜かれ…ああ、ショッキングな映像だった…。
お店に着いて受付票を記入し、順番を待つことに。
1時半くらいにいったが、待っている方は1人だけだった。
10分ほど待つと名前が呼ばれ、遂に川口先生と対面。
ドキドキである。
書いていて掠れることがあるんです、と言うと購入店を聞かれた。
初めての万年筆ということで調子に乗ってペン先を触ってみたりしていたので私が狂わせたかも、と言うと「これ買った時から調子悪かったと思うよ」と言ってくださった。
優しい…何か救われた気分に。
「お姉さんくらいの歳で周りに万年筆使っている人はいる?」と聞かれ、いませんと答えると「そうだろうねー」というお返事が。
カクノが流行ったから全国的に若い万年筆ユーザーが増えているのかと思ったけど、クリニックにはあまり来ないのか。
若い世代はカクノやLAMYの低価格万年筆が主流なのかな。
色んな話をしてくださっている間にも手は休めず、ひたすらやすりにかけては書いてみての調整をされていた。
正直何をどうしているのか全然解らない。
そもそも繊細な作業を喋りながら出来ること自体意味が解らない。
一分ほど見事な手際で調整した後に生まれ変わったグランセが返ってきた。
「はいどうぞ」
グランセNCは、それはもうスルスル~っという感じでインクが出てくる。
決して多すぎるわけじゃない。
絶妙なインクの具合で今まで掠れていた8が綺麗に書ける。
気持ち良い!
私が毎日喜んで使っていた万年筆は何だったのか。
今日初めてその本気に出会ってしまった。
ウキウキと文字を書いていたら、先生の方からペンケースの中にあるもう一本を指差し「それも」と。
実は受付票にはグランセのことしか書いていなかった。
なのに調整していただけることに。
そして、さっき引き取りに行ったばかりのプロギアスリムの番。
来る途中の電車の中で初めてカートリッジを差したくらい新品ほやほやである。
買ったばかりなので何もないと思うのですが…と伝え手渡すと、ルーペを覗いて一言。
「全然だめ!」
あああ、やっぱり、やっぱりそうですか…。
始めはグランセのようにやすりでスリスリされていたが綺麗にインクが出てこず、遂にはペン先をスポッと…(゜ロ゜;
買ったばかりのプロギアスリムが…ペン先を抜かれるほど重症だったとは、ショックが大きすぎる。
「万年筆は新品だから大丈夫っていうことは全然無いからね。珍しいことじゃないよ。」とのこと。
百貨店で買った万年筆が2本とも初期不良とは…。
「もしまた新しい万年筆を買うことになったらナガサワさんで買った方が良いんでしょうか」と訪ねると
「ナガサワの万年筆は青いシールが貼ってあるでしょ。あれはペンドクターがちゃんと調整した万年筆っていう意味だからね。そういうのを買うのが良いよ。」
というお話の後、
「でも万年筆は少ない本数の方が良い。
毎日使う事で自分の癖に合わせて行くのが万年筆にとって一番必要なこと。
細字と中字は、全く違った文字が書けるからこの2本で充分じゃないかな。
それから、昔からよく言われるけど例え少しの貸し借りでも自分以外の人に使わせないこと。
たったそれだけのことでも使い心地が変わってしまう繊細なペンだから」
そんなわけで、あと一本くらいは買うかもしれないけど少ない本数で毎日使う事、という先生のお言葉に従って今のグランセとプロギアスリムを大事に大事に使っていくことに決めたのであった。
さて、こちらは少し時間がかかったがプロギアスリムの調整も完了。
こちらも気持ち良く書ける仕上がりに。
全然違う!と言ったら先生に「そりゃそうでしょ。それが“万年筆”だよ」と言いながら笑われてしまった。
何年かに1回は調整して頂いた方が良いですか?という質問を最後にしたら
「毎日書き続けることが万年筆にとっては一番の調整になる。ぶつけたりしてペン先が調子悪くなってしまったということが無い限り必要ないよ」と教えて頂いたので毎日大切に使おう。
そしてお礼を言って席を立つ際に「また何かあったら持っておいで、見てあげるから。私が生きてる内にね」というブラックジョークまで頂いてしまった。
他にも色々お話させて頂いたが、全てが勉強になった。
調子の悪いペンを一瞬で本来の力を出せるように蘇らせる技術に惚れ惚れしてしまう。
先生は非常に柔らかく優しい方で、調整をして頂いている間ずっと楽しくお話ししていた。
遠かったけど、今日見てもらって本当に良かった。
こうしてこれまでより一層、万年筆に対する愛情が深まる私なのであった。